THE WHISKY JOURNAL

ウイスキーのブレンダーって何をしてる?味を生み出す職人の仕事

ウイスキーづくりに使われる銅製蒸溜器

原酒を組み合わせるだけではない、ウイスキーブレンダーの仕事を解説。テイスティング、味の設計、品質の維持、新商品の開発、将来の原酒づくりまで紹介します。

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ウイスキーの世界でよく耳にする「ブレンダー」。名前から、複数のウイスキーを混ぜ合わせる人という印象を持つかもしれません。

原酒を組み合わせることは大切な仕事のひとつです。それに加えて、ブレンダーは原酒の個性を見極め、商品の味わいを設計し、目指す品質を保ち、将来使う原酒についても考えます。ブレンデッドウイスキーだけでなく、シングルモルトの味づくりにも関わる仕事です。

ブレンダーは原酒から味を設計する

原酒は、蒸留所や製法、樽、熟成環境などによって、それぞれ異なる個性を持ちます。ブレンダーは原酒の香りや味、熟成の状態を確かめ、商品が目指す味わいに合わせて使い方を考えます。

サントリーはブレンダーの仕事を、既存商品の品質を維持することと、新しいウイスキーをつくることの両面から説明しています。さまざまな個性の原酒から、商品全体の味わいを組み立てる専門職です。

ブレンダーの主な5つの仕事

1. 原酒の香りや味わいを確かめる

ブレンダーは原酒をテイスティングし、香りや味、余韻、熟成の進み具合などを確認します。果実を思わせる香り、バニラのような甘い印象、スモーキーさ、樽の風味など、原酒ごとの特徴を把握して記録します。

サントリーの紹介によると、ブレンダーが1日に数百の原酒サンプルをテイスティングすることもあります。これは一つひとつの原酒の状態を確かめる作業で、何杯ものグラスを飲み干すことを意味しません。繊細な感覚だけでなく、香味の言葉や原酒の履歴を理解する経験も必要です。

2. 原酒を組み合わせて味をつくる

原酒の特徴を把握したら、目指す味に合う組み合わせや比率を検討します。例えば、果実を思わせる原酒を中心に甘い印象の原酒を重ねたり、少量のスモーキーな原酒を加えて全体に奥行きを持たせたりする方法が考えられます。これは組み合わせ方の例で、特定商品のレシピを示すものではありません。

個性の強い原酒を集めれば、必ずよい味になるわけではありません。原酒同士が調和するか、商品としてどんな印象に仕上げたいかを考えることが重要です。

3. 定番商品の品質を維持する

同じ商品でも、仕込んだ時期や樽、熟成環境によって原酒には違いが生まれます。定番商品では、ブレンダーが使う原酒や配合を調整し、ブランドが目指す香味に近づけます。

毎回まったく同じ原酒を使うのではなく、異なる原酒を選びながら商品らしい味わいを守る。品質を保つための判断も、ブレンダーの大切な役割です。

4. 新しいウイスキーを開発する

新商品や限定商品では、目指す香りや味わいを考え、それを実現する原酒を探します。樽の種類や熟成の異なる原酒を比べ、配合を試しながら商品にふさわしいバランスをつくります。

既存商品の味を守る仕事がある一方で、新しい組み合わせや香味を形にする創造力も求められます。

5. 将来使う原酒を考える

熟成には長い時間がかかるため、今ある原酒だけでなく、将来どのような原酒が必要になるかも考えます。どんな酒質を仕込み、どの樽に詰め、どの原酒を今使い、どれを将来のために残すか。こうした判断は、何年も先の商品づくりにつながります。

サントリーの山崎倶楽部の記事では、将来必要になる原酒を判断して現場に伝えることや、今仕込んだ原酒を次の世代のブレンダーへ引き継ぐ役割が紹介されています。

ウイスキーづくりに使われる銅製蒸溜器
蒸溜所の原酒と樽の個性を見極め、味を整えていく

シングルモルトにもブレンダーが関わる

「シングルモルトはひとつの樽だけでつくられる」と思われることがありますが、スコッチの「シングル」はひとつの蒸留所を指します。同じ蒸留所で造られた複数の樽のモルト原酒を組み合わせても、シングルモルトとして販売できます。

例えばサントリーは、シングルモルト山崎について、山崎蒸溜所でつくられるさまざまなモルト原酒をブレンドして完成すると説明しています。シングルモルトの味づくりにも、原酒の個性を組み合わせる仕事が活用されています。

スコッチの種類 原酒の組み合わせ
シングルモルト ひとつの蒸留所のモルト原酒。複数の樽を使うことがある
ブレンデッドモルト 複数の蒸留所のシングルモルト
ブレンデッドスコッチ モルトウイスキーとグレーンウイスキー

これはスコッチの分類を基準にした整理です。シングルモルトの定義は国や地域によって異なる場合があります。ひとつの樽の原酒だけを瓶詰めした商品は、一般に「シングルカスク」と呼ばれます。

マスターブレンダーとは?

「マスターブレンダー」や「チーフブレンダー」は、ウイスキーの味づくりを担う責任者やチームを率いる人に使われる肩書です。役職の名称や担当範囲はメーカーによって異なり、業界全体で共通する一つの職階として定められているわけではありません。

いずれも原酒や製造への深い理解、経験に基づく判断が求められます。担当者の仕事は、ブランドが目指す味わいを原酒の選定や配合に反映することです。

ブレンドウイスキーは品質が低い?

シングルモルトとブレンデッドウイスキーは、優劣で分けるものではありません。ひとつの蒸留所の個性や樽ごとの違いを楽しむスタイルもあれば、複数の蒸留所や原酒を組み合わせて、別のバランスや複雑さをつくるスタイルもあります。

どちらも、原酒の選定や仕上がりを決める技術によって完成します。ラベルの分類を品質の順位と考えず、自分の好みに合う香りや味を探す手がかりにしてみましょう。

ブレンダーを知ると、一本の見方が変わる

ブレンダーは原酒を混ぜるだけでなく、その個性を見極め、商品の味を設計し、品質を保ち、新しい商品や将来の原酒づくりを考えます。シングルモルトにもブレンダーの仕事が生かされていることを知ると、ラベルの「シングル」という言葉の意味も違って見えてきます。

シングルモルトと樽の関係については、シングルモルトの製造工程と原酒の組み合わせもあわせてご覧ください。樽ごとの香味の傾向は、熟成樽の種類を比べた記事で紹介しています。

参照した公式情報

本記事はメーカー公式情報をもとにブレンダーの役割を解説するもので、筆者の実飲体験や個別銘柄の実飲評価を述べたものではありません。